大波乱の展開となったST1000クラス。初代王者は、暫定ランキングトップの高橋裕紀が暫定ランキング2番手の名越哲平が優勝しても20位以内に入ればチャンピオン獲得という状況で最終戦を迎えていた。圧倒的に有利となっていた高橋だったが、レースウイークに入ってからトレーニング中の転倒で左手首のしゅうじょう骨、さらに肋骨3本にもヒビが入るケガを負っていた。それでも予選では、フロントロウを確保。大方の見解では、20位以内に入ることは難しくないというものだった。一方、名越は、常にセッションをリードする走りを見せポールポジションを獲得していた。 好スタートを見せたのは、セカンドグリッドの津田拓也だった。ホールショットを奪い、高橋、名越、岩戸亮介、渥美心、作本輝介、榎戸育寛と続いて行く。S字コーナー入口では、高橋が津田をかわしてトップに浮上するが、デグナーカーブ進入では、名越が高橋と津田を一気にかわしトップを奪う。デグナーカーブ2個目では、津田が高橋をかわし2番手に上がり、後方では、作本が渥美をかわしポジションを上げる。続くヘアピンでは、岩戸が高橋のインに入り込み3番手に浮上するが、バックストレートで高橋と作本が岩戸をかわして行く。オープニングラップは名越が制し、津田、高橋、作本、岩戸、渥美と続き、その背後には、出遅れた伊藤勇樹が迫っていた。2周目に入るホームストレートでは、高橋と作本が津田をかわしポジションアップ。デグナーカーブ進入では、伊藤が渥美のインを強引に突くと両者が接触。渥美が転倒を喫してしまい無念のリタイア。スタートからの混戦がようやく落ち着くかと思われたが、ここで高橋にジャンプスタートのペナルティが課せられる。今回は、レッドシグナルの点灯がやや長く、左手を痛めている高橋は、クラッチを抑えきれず、僅かに動いてしまった自覚があった。そのため、ポストにペナルティが表示されたのを見た高橋は、すみやかにピットロードに向かい、ライドスルーペナルティを消化。これで高橋は、最後尾となる30番手に落ちてしまう。 トップを走る名越は、ファステストラップを更新しながら独走体制を着実に築いており、このまま高橋がノーポイントとなった場合、名越が大逆転でチャンピオンというシチュエーションになっていた。残り周回数は9周。名越は、とにかく勝つことを考え、高橋は、20位まで追い上げることを考えていた。 名越を先頭に、作本が単独2番手で追い、3番手争いを津田、岩戸、伊藤が繰り広げ、6番手に榎戸、7番手争いを藤田拓哉、國川浩道、山口辰也、星野知也が繰り広げていた。 高橋は着実に順位を上げていた。5周目に27番手、6周目に23番手、7周目に21番手となると、8周目には、ついに20番手とポイント圏内に入ってくる。 レース終盤に入っても名越はトップを独走。2番手を走る作本の後方からは、伊藤、津田、岩戸が迫り4台でのバトルとなっていた。この4台の争いは激しく、マシン特性によって、得意なところでポジションを目まぐるしく入れかえていた。 名越は圧倒的な速さで2連勝を達成。高橋は、16位まで追い上げてチェッカーフラッグを受け、初代ST1000クラスチャンピオンに輝いた。2位争いは、伊藤が制し、作本、津田、岩戸と続いた。6位に単独走行となっていた榎戸が入り、7位争いは星野が制し、國川、山口と続いてチェッカーフラッグを受けた。