全4クラスが勢ぞろいし、今回の岡山ラウンドから本格的にシリーズ後半戦がスタートした全日本ロードレース選手権。第5戦MOTEGI2&4レースで、一足先に後半戦に突入していたJSB1000クラスは、新たな"流れ"が押し寄せていた。その中心にいるのがMuSASHi RT HARC-PRO.の水野涼だ。前戦からTeam HRCのエースである高橋巧と同仕様のワークスマシンが与えられ、水野自身の成長も相まって一気にトップコンテンダーの一人となってきている。MOTEGI2&4レースでは、テストで負傷した高橋に代わり絶対王者・中須賀克行とトップ争いを最終ラップまで繰り広げた。その勢いのままに、前週(8月22-23日)に行われた公開テストでは、1分27秒686をマークし、トップにつけた。 一方、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの野左根航汰も水野の走りに刺激を受けている。前戦では、水野とのバトルを繰り広げている最中に転倒し悔しい思いをした。公開テスト初日には、水野がタイムを出すと、すかさずタイムを出して上回りあからさまにライバル心をむき出しにしていた。この若手2人と、これまでJSB1000クラスを牽引してきた中須賀と高橋が、どんな戦いを見せるのかが、今回、そしてシリーズ後半戦の流れになるだろう。 レースウイーク初日は、雨上がりでグリップが悪い中、野左根がトップタイム。走り始めはよく、「今シーズンで一番優勝に近いところにいる」と自信のコメントを残していた。一方、水野はテストのときのフィーリングが得られず苦戦。9番手に沈んでいたが、路面コンディションが回復した土曜日には復活していた。 高橋は、そんな後輩の速さを見ながら初日は5番手。スーパーバイク世界選手権第10戦ポルトガルへの代役参戦も決まり、超ハードスケジュールの真っ直中にいた。岡山での公開テストを終えた後、すぐにポルトガルに飛び事前テスト(8月24-25日)に参加。岡山ラウンドのレースウイークの火曜日に帰国。そして今回のレース終えたらすぐにポルトガルに飛んでレースをこなすことになっている。 公式予選は、ノックアウト方式で行われQ1で中須賀、野左根、水野が1分27秒台で続き、高橋は5番手で続いていた。そして10台で争われたQ2では、水野が真っ先に1分27秒台に入れる1分27秒445をマークしトップに立つ。この後、中須賀は1分27秒388を出しトップを奪うと、さらに自身の持つコースレコードを更新する1分27秒178をたたき出し文句なしのポールポジションを獲得した。2番手に水野、野左根も1分27秒台に入れ3番手と、好調な3人がフロントロウに並ぶ結果となった。高橋も1分27秒台に入れ意地を見せる。「バイクに乗るには(ケガは)全く問題ないですね。自己ベストも出せていますし、いいレースをしたいですね」と語るが、バイクを降りると、まだ足を引きずっている姿は痛々しい。本人は大丈夫と言うが、今回も痛みと戦いながらの耐えるレースとなりそうだ。 5番手にカワサキのエース渡辺一馬、6番手にヨシムラの加賀山就臣、7番手に岩戸亮介と1分28秒台で続き、8番手に前田恵助、9番手に秋吉耕佑、10番手に渡辺一樹というQ2となった。渡辺一樹は、最後のアタック中にダブルヘアピンで転倒。セクター1、セクター2と自己ベストをマークしており、Q1では、1分28秒079を記録していただけに1分27秒台に入っていただろう。 今回もトップ争いは中須賀、野左根のYAMAHA FACTORY RACING TEAMの2台、そして水野と高橋のHondaの2台が繰り広げることになりそうだ。「今回は前戦のリベンジをしたい」と強気の水野が、百戦錬磨の中須賀に対し、どんなバトルを仕掛けていくか!? 水野には絶対に負けたくない野左根も2年振りの優勝を実現したいところだ。タイトル争いの流れを引き寄せたい中須賀、意地を見せたい高橋。天気予報には雨マークもあり、ウエットコンディションになれば、違う展開があるかもしれない。それぞれの思惑が交錯するJSB1000クラスの決勝は、13時35分スタート予定!