2015年の全日本JSB1000クラスは、ゼッケン1をつける中須賀克行の速さが強調されるシーズンとなっている。ここまで6戦中5戦でポールポジションから優勝を飾っており、その強さはシーズン終盤に入り、さらに増してきている。その原動力となっているのは、ライダー中須賀自身の速さはもちろん、今シーズン、フルモデルチェンジして投入されたYZF-R1のポテンシャル、そしてワークス活動を再開したYAMAHA FACTORY RACING TEAMという強化されたチーム体制と三拍子そろったことだと言えるだろう。中須賀は、ヤマハMotoGPマシンの開発ライダーとしても重責を担っているが、そのこと自体も中須賀が速さを磨くことに役立っている。MotoGPマシンからJSB1000マシンに乗り換えると、すべてがスローモーションに感じ、操作に余裕ができると言う。それは、ニューR1になっても変わっていない。今週もMotoGPマシンのテストを行い、そのまま鈴鹿入りしたが、初日から本人がラップタイマーが壊れているのかと思ったくらい速いタイムで走り始めている。 優勝を果たした鈴鹿8耐の予選では、ポル・エスパルガロが2分06秒000を出し、中須賀は2分06秒059と僅かに及ばなかったが、現役MotoGPライダーと変わらない速さを見せていた。しかし中須賀は鈴鹿で自分自身が作り上げたマシンで負けたことが悔しかったと言う。今回のMFJ-GPは、夏に比べれば気温も下がりエンジン、タイヤにはハード的によくなったが、Q2は、TOP10サバイバルで行われるだけにタイムを出すには、難しい部分もあった。そんな喧噪をよそに、中須賀は初日の1本目から2分06秒052と自己ベストを更新。金曜日には、ついに2分05秒台に突入し、2分05秒781をマークして土曜日の公式予選を迎えていた。 今年は、40分間のQ1でレース2のグリッドが決まり、Q1の上位10名が、6周で2台ずつ脱落して行くQ2・TOP10サバイバルに進出し、レース1のグリッドが決まるノックアウト予選で争われた。中須賀は、Q1で2周目のアタックでいきなり2分05秒192という驚異的なタイムをマーク。このタイムがベストとなるが、他車にひっかかったことと2輪専用シケインでミスをしたと語り、2分04秒台も夢ではなかった。2番手には同じくYZF-R1を駆る野左根航汰がつけたが、中須賀との差は1秒423もついている状態。「中須賀さんを必死に追ったのですが、離されてしまい、いいタイムを出したという実感はなかったのですが、それがベストでした。レース1は短いですが、レース2でも中盤ぐらいまではタイムを落とさないで走れることを確認できているので、いいレースをしたい」と野左根。今シーズン最高の仕上がりとなっているようだ。 開幕戦鈴鹿で唯一、中須賀に土をつけている津田拓也はQ1で3番手につけた。「開幕戦のときより確実にいいペースで走ることができているし、2分06秒台で連続して走れたことは自信になりましたが、それ以上に(中須賀は)速いですから」とコメント。以下、高橋巧、渡辺一樹、今回はTSRからエントリーしている渡辺一馬、秋吉耕佑、加賀山就臣、山口辰也と続きQ2に進出。柳川明、浦本修充、中冨伸一などは、ノックアウトされた形だった。 TOP10サバイバルは、ラップタイムの下位が2台ずつ脱落していく方式だったが、ここでも中須賀は、ただ一人2分05秒台に入れる走りでトップを独走しダブルポールを獲得。2番手に2分06秒台を4度記録する走りをした津田がつけ、高橋が3番手グリッドを確保。市販キット車を駆る秋吉が4番手と健闘したのがトピックスの一つとなった。 レース1は10周という短期決戦、レース2は20周と変則的な周回数で行われるが、どちらにせよ中須賀の速さについて行くライダーは現れそうにないだけにレース1で中須賀の4連覇、6度目の全日本チャンピオンが決まる可能性が高いと言える。津田、高橋、渡辺一樹という各メーカーを代表するライダーが、どこまで中須賀を苦しめられるか!? 中須賀のワンサイドレースとなるか!? 2015年シーズン最後の戦いが間もなく始まる。