全日本ロードレース選手権が開催されている中で、最もタイトな筑波サーキットが舞台のシリーズ第4戦。事前テストからディフェンディングチャンピオンの中須賀克行とポイントリーダーの秋吉耕佑がセッションを引っ張っていたが、レースウイークに入ると中須賀が身体の回復具合と相まって調子を上げてくる。一方、秋吉は、自分自身のスタイルに合ったマシン作りに集中。着実にセットアップを進めていたのだが…。 公式予選が行われた土曜日は、朝方は雲が覆っていたものの時間が経つにつれ晴れ間が広がり蒸し暑くなっていく。JSB1000クラスは、筑波では初めてノックアウト方式で行われ第1セッションが始まるころには、路面温度が50度を超えるほどの暑さとなっていた。セッション開始早々、アクシデントが発生する。何と秋吉が1コーナーでクラッシュ! 頭を強く打ち左大腿骨を骨折、肺挫傷を負ってしまい、すぐにチームからリタイア届けが提出された。このため、今回は秋吉がノーポイントになることが確定。現在、中須賀が11ポイント差で追っており逆転は必至の状況となった。トップ10チャレンジでは、秋吉のいなくなったコース上で激しいタイムアタックが繰り広げられた。その中で中須賀が55秒772をマークしポールポジションを獲得。 「マシンセットはいい方向に仕上がっていますし、筑波は抜きどころの少ないコースなのでポールポジションを獲れたことは重要ですね。スタートをしっかり決めてレースを引っ張っていく展開にしたいですね。序盤3戦よりは、体調もいいですし攻めて行きますよ」と仕上がりは上々のようだ。ただ、まだ左肩は完治しておらず、テーピングやレーシングスーツにタオルを挟んで固定している状態で走っている。だが、今回の中須賀に太刀打ちするのは容易ではなさそうだ。 2番手にヨシムラの津田拓也が55秒808と僅差で続く健闘を見せた。「事前テストから試行錯誤を繰り返し予選で集大成を出した結果です。アベレージも考えながらセットアップを進めてきたのでレースに向けていい手応えがあります。決勝では、中須賀選手にキッチリついていって経験値を上げたいですね。そう言い続けて4戦目ですが、今回こそトップが見えるところでレースがしたいです。そうすれば、今の自分に足りないものが見えてくるはずですから」と津田。JSB1000クラスでの経験値は、まだ少ないが、着実な速さを見せている。 続く3番手にもJSB1000ルーキーの渡辺一樹がつけた。「トップ10チャレンジで転倒してしまいましたが、ネガティブなものではなく攻めて行った結果です。事前テストから今のパッケージでセットを詰めてきて、雨がパラついている中で57秒フラットが出ていたので、完全なドライならば56秒真ん中は出ると思っていたら、金曜にそのタイムが出たので、自信になりました。今回は上位で最後までレースをしたいですね」と渡辺。 これに市販キット車を駆る山口辰也が4番手に食い込む健闘を見せたが、予選7番手の高橋巧まで、僅差で続いている。「まだ詰める部分があるので、決勝の気温が下がればボクたちに有利になると思います。昨年は、表彰台に上がっていますし、チャンスがあれば狙っていきたいですね」と山口。一方、5番手につけた加賀山は、「ダンロップさんが事前テストからの短時間でアジャストしてきてくれたので、よくなってきています。ただ勝つためには、今ひとつ足りない状態ですが、レースは、何があるか分かりませんからね。ベストを尽くすだけです」とコメント。 レースは、中須賀が引っ張り、このペースに何人ついていけるかがカギとなるだろう。津田、渡辺のJSBルーキーが、どんな走りを見せるか注目したい。山口、加賀山、柳川明、高橋も表彰台に立つ可能性は、高いと言えるだろう。いずれにせよ今回のレースのイニシアチブは、中須賀が握っていると言っても過言ではない。中須賀が、どんなタイムで周回するかが、レース展開を左右する要因となるのは間違いない。筑波ラウンドを制するのは、果たして!?