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'16全日本モトクロス選手権第1戦 九州大会
↑'16スケジュール
今季の全日本モトクロス選手権シリーズは、昨年よりも1戦減少して、2012〜2014年と同じく年間9戦で競われる。これは、昨年は年間3戦が設定されていた宮城県・スポーツランドSUGOを舞台とした大会のうち、夏の大会がなくなったことによるもの。7会場を転戦するのは昨年と同様で、夏のSUGOがないことに加えて、第6戦東北大会がこれまでの7月第3週から梅雨明け期待が高まる第4週にスライドしたことを除けば、昨年を踏襲するスケジュールとなっている。
開幕戦の舞台は、今年も熊本県のHSR九州。熊本市内と阿蘇の中間付近に立地するコースは、2014年の大幅なコース改良によって、阿蘇の雄大な地を思わせるダイナミックなレイアウトが取り入れられている。今大会の直前に、10tダンプ60台分ほどの山砂を新たに敷くメンテナンスも施された。予選が行われた土曜日は好天に恵まれ、汗ばむ陽気。しかし午後からは風が強くなった。そして、各クラスの決勝が開催された日曜日は、朝から曇り空。お昼すぎから雨が降りだし、コースは徐々にスリッピーな状態となったが、マディほどまで悪化することはなかった。なお今大会は、2日間で6,700名のモトクロスファンが、年に一度の九州大会を楽しんだ。
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とくにヒート1では圧倒的な速さで
ライバルを振り切った成田亮
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例年以上の意気込みで臨み
今年も開幕戦両ヒートを制した成田
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今季は、有力ライダーの移籍やマシンスイッチが相次ぎ、近年まれに見る変動の年となった。4スト450ccマシンが参戦するIA-1は、昨年度ランキングのワン・ツーを飾ったスズキファクトリーチームこそ、新王者の小島庸平(#1)と1ポイント差で2位となった熱田孝高(#2)が、昨年と同じくコンビを組むが、ホンダファクトリーチームは成田亮(#982)の1台体制に。ヤマハファクトリーチームは、ケガにより昨年は完全欠場となった平田優(#99)が復帰し、カワサキからマシンをスイッチした三原拓也(#6)とコンビを組む。三原が抜けたカワサキファクトリーは、残留の新井宏彰(#331)に加えて、ベテランの田中教世(#8)が2004年以来のチーム復帰を果たした。また、ホンダファクトリーを離れた小方誠(#4)は、カワサキ系のチームでファクトリーマシンを駆る。さらに、星野裕(#9)はKTMからカワサキ、星野優位(#166)はホンダからKTM、深谷広一(#13)はホンダからスズキへ、それぞれチーム&マシンを変更した。
この開幕戦は、21台が出場。その決勝ヒート1で好スタートを決めたのは新井。これにIAルーキーの長門健一(#01)が続いて会場を沸かせたが、長門はすぐに順位を下げていった。スタート直後の大混戦で、熱田や田中は転倒などで順位を落とし、逆に成田は巧みに順位アップ。そして1周目を成田、小島、新井、小方、三原、長門、星野裕の順でクリアした。すると序盤から、成田は早くも逃げ切り態勢。2周目には、2番手の小島より約1秒も速いファステストラップタイムでリードを拡大すると、翌周以降もハイペースを維持して、アドバンテージを拡大していった。3番手の新井は、3秒ほど後方で2番手の小島をマーク。新井の後方は大きめに間隔が開き、小方と三原が接近戦を演じた。3周目、これを制して三原が4番手に浮上。翌周には、4番手集団からさらに遅れた3台によるグループの中で、1周目12番手と苦戦した平田がポジションを上げ、6番手となったが、この段階で5番手の小方とは約7秒差、表彰台圏内となる3番手の新井とは約14秒差と、厳しい展開となった。
レース中盤、トップの成田は完全に独走。それでもなおハイペースを守り続けて、リードを拡大していった。一方で2番手争いは、小島と新井の距離がなくなり、レースが後半に入るころから接近戦となった。その後方は大きく間が開き、三原が4番手、小方が5番手、平田が6番手で、それぞれ単独走行になった。レース終盤、新井は小島を僅差で追い続けるが、粘る小島を逆転するチャンスは得られず。レースは16周でチェッカーとなり、成田が優勝、小島が2位、新井が3位で表彰台に登壇した。また三原は4位、小方は5位、平田は6位に入賞した。
決勝ヒート2は、小雨が降り続ける中でのレースとなった。ホールショットを奪ったのは小島。これに北居良樹(#100)、成田、新井が続くと、すぐに成田がトップに浮上。成田に抜かれた小島は2番手を守り、その後方には巧みに順位を上げた熱田、さらに新井、北居、星野裕、平田、三原が続いて、オープニングラップをクリアした。2周目、チームメイト同士のバトルを制して、熱田が2番手に浮上。混戦の5番手争いでは、平田が一気にその先頭に立ち、翌周には4番手の新井まで迫った。6番手で粘る北居の後方には三原、星野裕、小方、田中が続き、翌周にはまず三原が、北居攻略に成功した。同じ周、平田は新井を抜いて順位を上げると、その勢いを保って3番手の小島に迫った。
5周目、小方が転倒によりリタイア。さらに翌周には小島も転倒を喫して、6番手に順位を下げた。この段階で、トップの成田は2番手の熱田を5秒ほどリード。平田は、熱田を2秒ほどの差で追い、4番手の新井と5番手の三原は前後の間隔をやや開けての走行となった。鋭い追い上げを続けてきた平田は、7周目には熱田との距離を一気に縮め、僅差の2番手争いがスタート。翌周には平田が前に出ると、粘る熱田を少し引き離した。しかし平田の追い上げはここまでで、レース後半に成田との距離は拡大。これにより成田が、5年連続となる開幕戦両ヒート制覇を達成した。平田は2位をキープしてフィニッシュ。終盤、熱田の後方には新井が迫り、さらに三原も接近したが、最後まで順位は変わらず熱田が3位、新井が4位、三原が5位となった。また小島が、転倒後に粘って6位でゴールした。
両ヒートで勝利を収めた成田は、「ホンダの二輪車を生産している熊本で、プロトタイプマシンを駆って優勝できたことは、本当にうれしい。シーズンオフの間、毎週のようにテストをしてくれた関係者のみんなに感謝しています」と、満面の笑顔で大歓声に応えた。
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ホンダファクトリーに新加入した
能塚智寛がいきなり実力を発揮
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ファンがとくに多い地元の九州で
両ヒート優勝を飾った能塚
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4スト250ccマシンが参戦するIA-2は、昨年度王者の富田俊樹が、今季は米国のレースに挑戦。王者不在の戦いとなる。ファクトリーチーム勢では、その富田が抜けたホンダに、昨年はカワサキを駆ってランキング2位となった能塚智寛(#28)が加入した。スズキファクトリーチームの竹中純矢(#29)や、ヤマハ若手育成チームの渡辺祐介(#32)、ヤマハを駆る岡野聖(#31)、ホンダに乗る田中雅己(#113)、古賀太基(#122)、大塚豪太(#34)らの昨年度ランキング上位勢は、昨年と同じのチームからの参戦となる。
決勝ヒート1、好スタートから1周目をトップでクリアしたのは能塚。古賀、IAルーキーの森優介(#05)、小川孝平(#912)、岡野、竹中が続いた。レース序盤、森は徐々に順位を下げ、古賀と小川は僅差の2番手争いを展開。この間に、能塚はファステストラップタイムで逃げ切りを図り、ややリードを拡大した。小川の後方には岡野と竹中、さらに1周目8番手とやや出遅れていた田中も迫り、2番手から6番手までが縦に長いひとつのグループに。4周目には、小川と古賀のバトルがより白熱。この間に岡野がふたりに迫ると、翌周には一気に2台をパスして2番手に順位を上げた。この段階で、トップの能塚は約7秒リードとなった。
レースが中盤に入った6周目、小川も古賀を抜き、さらに古賀の背後には竹中が接近。ペースが落ちた古賀を、7周目には竹中、8周目には田中がパスして、古賀は6番手に後退した。一方で竹中は、2番手の岡野から遅れだした小川に迫り、9周目にはパッシングに成功。するとこれに田中が続いて、10周目にはトップの能塚と2番手の岡野が単独走行で、3番手の竹中と4番手の田中が約2秒差の接戦となった。そしてラスト4周となった13周目、田中が竹中をパス。しかし竹中も粘り、ラストラップには一時、再逆転を果たした。レースは16周でチェッカーとなり、まず能塚がトップでゴールし、岡野が2位でフィニッシュ。意地の走りで表彰台圏内を守った田中が3位となり、竹中は悔しい4位となった。5位には小川、6位には古賀が入賞した。
小雨が降るレースとなった決勝ヒート2は、竹中と田中の好スタートで幕を開けた。しかしすぐに、能塚がトップを奪取。ヒート1に続いて、そのまま逃げ切るかと思われた。竹中と田中の後方では、古賀と岡野が4番手争い。2周目にはその後方に、小川と渡辺も順位を上げてきた。3周目、トップを走っていた能塚が、ブレーキング時にリヤブレーキ操作をミスしてエンジンストール。すぐに再スタートできたが、順位は5番手に後退して、竹中がトップに浮上した。するとこれを田中が猛追して、僅差のトップ争いに。この2台から3秒ほど遅れた古賀の背後には、岡野と能塚が迫った。5周目、竹中はわずかに田中を引き離し、3番手集団では能塚が岡野をパス。翌周には古賀も攻略して、能塚は3番手に順位を回復した。
この段階で竹中、田中、能塚、古賀はそれぞれ2秒前後の間隔で、古賀のすぐ背後には岡野が迫る展開。するとここから能塚は、7周目に田中、8周目に竹中を抜き、あっさりとトップに戻った。抜かれた竹中は、能塚をマークしきれず、逆に田中がその背後に接近。10周目には、田中が逆転に成功した。レース終盤、3番手の竹中に今度は岡野が襲いかかり、12周目に逆転。レースは15周でチェッカーとなり、能塚が優勝、田中が2位、岡野が3位で表彰台に登壇した。竹中は、再び悔しい4位。渡辺が5位、古賀が6位に入賞した。
ホンダに乗って初めてとなる全日本大会で両ヒート優勝を達成した能塚は、「レース前は、いつもより緊張していました。ヒート2でエンストしたときはかなり焦りましたが、うまく気持ちを切り替えられてよかったです」と、安どの表情を浮かべていた。
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ヒート1では最後まで安定した走りで
まずは開幕優勝を決めた大倉由揮
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ヒート2では滑る路面に苦戦するも
しっかり勝利を収めた大倉
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決勝ヒート1で好スタートを決めたのは和泉夏輝(#3)。松本直人(#5)と下村里駆(#62)が続くと、すぐに下村がトップ浮上。スタート直後の混戦で大倉由揮(#1)が巧みに順位を上げ、1周目を下村、和泉、大倉、松本、真野凌輔(#11)、林憂人(#69)の順でクリアした。2周目、下村と和泉と大倉が三つ巴の争い。これで大倉がトップに立ち、3台から3秒ほど遅れて地元の石浦優(#4)、林、真野が4番手争いを繰り広げた。さらにその後方も、第2グループから3秒ほど離れて大混戦となった。トップに立った大倉は、徐々にリードを拡大。遅れた和泉と下村には石浦が迫り、2番手争いが3台になった。
3周目に下村をパスした石浦は、翌周には和泉も攻略して2番手に浮上。すると、トップの大倉と同じく後続を引き離していった。レース前半が終わる5周目、3番手争いは5台に膨れ上がり、この中で和泉が後退。逆に、1周目16番手と大きく出遅れていた西垣魁星(#28)が順位を上げた。レース後半は、下村と西垣が、5番手以下からリードを奪いながらも表彰台を賭けた激しいバトルを展開。そしてラスト3周となった8周目、ついに西垣が前に出た。トップの大倉と2番手の石浦は、レース終盤も安定した走りで単独走行。大倉が優勝、石浦が2位、西垣が3位、下村が4位となった。後続をなんとか抑えた林が5位、一時は9番手に落ちながら後半に追い上げた上岡聖志朗(#81)が6位入賞となった。
この日の最終レースとして行われたヒート2は、雨の影響で滑りやすくなった路面でのレース。スタート直後は激しい主導権争いとなり、ヒート1同様に混戦の中で順位を上げた大倉が、ホールショットの林に迫ったが、このふたりを西垣が一気にパスして西垣、大倉、林、大澤雅史(#16)、石浦、町田旺郷(#57)の順で1周目をクリアした。2周目、大倉がトップに立ったが、抜かれた西垣も喰らいつき接近戦。ところが、滑りやすく変化したジャンプの着地点で、大倉の車体後部に西垣の前輪がヒットし、西垣が転倒した。これにより大倉、林、石浦、町田の順となり、西垣は大澤よりひとつ手前の5番手から、再浮上を狙った。
3周目、西垣はまず町田を抜いて4番手。一方、石浦は林をパスして、トップの大倉に迫った。翌周、西垣は林の攻略に成功して3番手に順位を回復。石浦は大倉との距離を保つと、5周目には約2秒差にまで迫った。レース後半、西垣以下はトップの2台から遅れ、優勝争いは大倉と石浦にほぼ絞られ、2台は3〜4秒ほどの差で周回を続けた。レース終盤、3番手の西垣を必死にマークしていた林が少し遅れ、これに5番手の町田が接近。ラストラップの10周目には、ついにテール・トゥ・ノーズとなった。そしてレースは、最後までわずかなリードを守った大倉が再び優勝。石浦が2位、西垣が3位、最終ラップで逆転に成功した町田が4位、林が5位、1周目15番手から追い上げた大城魁之輔(#65)が6位に入賞した。
両ヒート1を制した大倉は、「ピンピンは獲れたのですが、ヒート2はスリッピーな路面に苦戦してペースが上げられず、納得できる走りではありませんでした」と、優勝にもどこか不満な様子。また石浦は、「いつも地元だけしか成績がよくないので、これを次戦以降にも続けていきたいです」と、早くも第2戦を見据えていた。 |
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チームを移籍した中野洋子が
T.E.SPORTに勝利をもたらした
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高橋絵莉子(#25)のホールショットで一度はレースがスタートしたが、地元ライダーの畑尾樹璃(#14)が選んだスターティングゲートがうまく作動していなかったことが判明して、国籍変更により邵から中野姓になった中野洋子(#3)がトップに立ったところで、赤旗再スタートの判断となった。これにより各ライダーは、気持ちの切り替えと集中力キープが求められたが、2度目のスタート直後から再び快走したのは中野。1周目でトップに浮上して、レースをけん引した。これに続いたのは、最初のハプニングを物ともしなかった畑尾。さらに本田七海(#4)、久保まな(#5)、竹内優菜(#2)が追った。昨年度女王の安原さや(#1)は大きく出遅れ、順位としては1周目8番手ながら、トップの中野からは約15秒も離されてしまった。
レース序盤から、アグレッシブな走りを披露した中野は、2周目にファステストラップを叩き出すと、徐々に独走態勢へ。一方で2番手争いは激しく、2周目に本田が畑尾をパスしたが、翌周に再び順位を入れ替えると、その後は畑尾、本田、竹内の3台が接近戦を演じた。そしてレースが後半に入った5周目、竹内が本田の攻略に成功。しかしその直後、竹内は転倒を喫して7番手まで順位を落とした。竹内の転倒で順位を戻した本田は、その前の周から急激にペースが落ちはじめ、これで畑尾がリード。一方で本田の後方には、一時は5秒以上も遅れていた久保が接近してきた。そして迎えた最終ラップで、久保が逆転に成功。中野は、最後までハイペースを維持してトップチェッカー。畑尾が2位、久保が3位、本田が4位に入賞した。安原は単独走行の5位。竹内は6位でレースを終えた。
「昨年末に佐藤健二監督が亡くなり、モトロマンというチームもなくなりましたが、東福寺保雄監督率いるT.E.SPORTのおかげで、今年もレースが続けられています。佐藤監督にも、チャンピオンを獲ると約束したので、それに向かってがんばります」とレース後の中野。一方、バッドラックをチャンスに変えた2位の畑尾は、「今回は、実力不足で中野選手についていけなかったけど、自分も目標はチャンピオンです」と、地元ファンに宣言した。
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最終ラップに見事な逆転を果たし
Aクラス優勝を獲得した渡邊賢斗
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キッズライダーが参加するチャイルドクロスは、大幅なショートカットで1周1分ほどの設定にしたコースを、5分+1周する方式で行われた。国内メーカー製となる4ストローク50ccマシンが走るAクラスに20名、海外ブランドが力を入れる2ストロークマシンで参加できるBクラスに2名と、合計22名がエントリーしたが、Bクラスの1台はDNSとなった。
唯一のBクラスライダーとなった馬場新一郎(#5)が好スタートを決めて、オープニングラップをトップでクリア。渡邊賢斗(#7)、瀬尾柚姫(#70)、川崎羽留斗(#25)、赤松樹愛(#28)がこれに続いた。2周目以降、馬場は完全に独走。瀬尾が2番手に浮上し、その3秒ほど後方では渡邊と川崎が僅差の3番手争いを繰り広げた。レースが後半に入ると、渡邊がペースを上げ、川崎を振り切って2番手の瀬尾に接近。最終となった6周目に、逆転を果たした。そしてレースは、最後まで独走を続けた馬場が総合優勝。渡邊が総合2位でAクラス優勝、瀬尾が総合3位となった。総合4位は、1周目6番手から追い上げた甲斐原昊晴(#18)。川崎が総合5位、赤松が総合6位となった。
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