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あらゆる場面でていねいな操作を。
スピードの遅いトライアルだからこそ。
トライアルの楽しさは、始めたが最後、一生続けている人が多いってところに、よく現れています。たぶん、すげーおもしろいんだね。でも、始めるまでは、トライアルの楽しみ方とかテクニックとか、わかんないことが多い。
ここで、ちょっとだけ教えましょう。全部教えろ? やだよー。トライアルはとっても奥が深いから、さらっと教えるなんて、無理っ。トライアルって、始めたとたん、アクセルもクラッチもブレーキも、今までふつうにやってきたテクニックが通用しないのに、びっくりすることでしょう。トライアルは、それをいつでも、全部一度に使って走ってます。のんびり走ってるように見えて、けっこう忙しいんだよ。
舗装された道とオフロードのちがいは、まず、道が平らじゃないこと。油断して走ると、路面の凹凸にけつまづいてひっくり返ります。これ、あぶない。
オフロードには、ちょいと急な登りや、うへって言っちゃいそうな下り坂もあったりする。簡単にいえば「走れるものなら走ってみろ」みたいなのが、オフロード。だから、おもしろい。
最初から、走れないようなところで練習しても、苦しいばっかりでなかなかうまくはなれません。安全なところでちょっとずつじっくり練習して、確実にじょうずになっていきましょう。
トライアル経験がなくて、しかもオフロード経験もまったくないなんて人は、なんでもいいからオフロード経験から始めましょう。ご自宅に広大な庭があったらそれでよし(そんなもの、ないか)、オートバイで走るのが具合悪そうだったら、自転車で走るのだって、オフロード入門コースとして、充分に意味があります。
トライアルは、オフロードを走ります。オフロードを走るってことがどんなことか、これに慣れてるかどうかは、大きな分岐点。オフロードは刻一刻様子を変えるし、一筋縄じゃいかない。それがおもしろい。あなたはもう、平らな道だけじゃ満足できない。
アクセル、クラッチ、ブレーキは、ていねいに、デリケートに、それにつきます。めりはりのある操作や、時には思い切りも必要になりますが、基本はあくまで微妙な操作をマスターすること。滑ってスタックしたり、すってんころりん転ぶのも、その半分はここに問題あり。
今どきのトライアルマシンに乗ると、たぶんびっくりします。前後のブレーキが、どえらいききます。ちょっと乱暴にブレーキを操作しようもんなら、あっという間にすってんころりん。
ブレーキだけじゃありませぬ。アクセルだっていっしょ。ただ回せばいいと思っていたら、痛い目にあいます。
あなたのアクセル、ブレーキのコントロール、たぶん、全部荒っぽすぎ。滑りにくい舗装路を走るのと、つるっつるに滑りやすい泥の上を走るのは、こりゃ、ぜんぜんちがうもの。「やさしくしてね」って言われても、これがなかなかむずかしいんです。トライアルマシンはブレーキもアクセルも、ちょっとしたレスポンスがすごくいいので、あなどらないでくださいね。
教習所で教わったアクセルとクラッチの操作、もう一度勉強してみましょう。アクセルをほんのちょっとだけ開く。クラッチをそーっと、そーっとつないでいく。ぐぐぐとチェーンが引っ張られ、後輪が動きだそうとする。ほーんの少しだけ、アクセルを開け足して、さらにクラッチをつなぐ。するすると後輪が回転し始める。地面と後輪が、しっかり噛み合って動いているのを確認しながらクラッチを離していく。バイク、さらに動く。完全にクラッチを離したら、アクセルを開けていく。以上、止まっているバイクがスタートするまでのアクセルとクラッチのお仕事。
どんな急加速でも、この一連のお仕事の基本は変わりません。ちょっとだけ、すべての操作が素早くなるだけです。もちろん、早い動作になっても、ていねいに操作するのは変わりません。お忘れなくなく。
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正しいポジションの練習にも。
どこでもできるトライアル。
スタンディングのお勉強は、ただ立つだけに終わりません。スタンディングスティルで手をはなせば、それがあなたの正しい姿勢。マシンの前後、左右方向、おいしいところに乗っていられるということです。この感覚をそのまま、上りや下りを走ってみてください。坂でまくれるのも、下りで前輪をとられて転ぶのも、実は正しい姿勢がとれていないからだったりします。
さて、すんなりスタンディングスティルができるようになったら、ハンドルから手を離してみましょう。いよいよ、ハンドル操作ではバランス修正ができません。今度は、右足と左足の、微妙な荷重操作でバランス修正をおこないます。足の裏の感覚は、現代人はずいぶん退化しているものですから、全身全霊を足の裏に向けてください(ハンドルを使ってマシンを左右に揺さぶることで、フットレストからの圧力を足の裏が感じる訓練ができるかもしれません)。
手を離すには、フットレストで左右のバランスをとるほかに、人間が前後のセンターに立っている必要があります。そうじゃないと、前や後ろに落っこっちゃいますからね。
一朝一夕でできるもんではありませんから、あわてずに取り組んでくださいまし。手を離せるようになったら、あらためてそこからハンドルに手を添えてみます。そう、マシンに乗っている感じは、まさにそんな感じ。ずいぶん遠まわりをした感じがするかもしれないけど、急がば回れ。最初にバッチリ基本姿勢を作ってしまえば、あとがうんと簡単です。
ハンドルに添える手は、外側から握ります。包丁や金槌を持つように、といったらわかるかな? こうやって握ると、アクセルを全開にしても、ぶざまにひじが下がったりしません。
さらにこうやって握れば、上半身が、大きな輪になります。路面からの衝撃は、この輪っかが収縮することで、ふわんふわんと吸収してくれます。腕がつっぱって、二等辺三角形になっているとどうなるか。ちょっと前輪を凹凸にはねられただけで、上半身がぐらぐらしちゃいますね。正しい姿勢で乗ることが、トライアルライディングを楽ちんにしてくれます。
さらに。ハンドルを外側から握ると、手のひらと小指、薬指が握るアクションを担当します。人差し指や中指は、あんまり握る仕事はしていません。クラッチとブレーキのレバー操作は、人さし指(と、必要に応じて中指も加える)でおこないなさいと言われているのには、こういう理由があるのです。
足元では、マシンとブーツの間に少し余裕を持たせましょう。トライアルは激しいアクションをしますから、足元でがっちりはさんじゃったりしたら、その動きを規制しちゃうことになるからです。
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重くないキック、
エンジンのかけ方。

トライアルマシンのキックが重たいとお嘆きのあなた、それはあなたが、わざわざ重たいようにキックしているからです。エンジンの構造をちょっとだけ理解して、エンジンが要求しているとおり、そぉー、スルっとキックペダルを降ろせば、あら、軽い。誰だって、簡単にエンジンがかけられます。いつも用心棒にキックしてもらってるあなた、考え直してね。
トライアルバイクでは、セルモーター始動のものはごく少数です。キック始動がほとんど。しかも、あんまり楽ちんにキックできるようには考えられていません。でも、大丈夫。重くないキック、 エンジンのかけ方。 これを覚えれば、セル付や小排気量にこだわる必要はなくなります。
エンジンは、ピストンがシリンダーの中で空気をぎゅーっと押し縮めていきます。この、空気を押し縮めていくところが、キックがとっても重いところです。
逆に、ピストンが一番上までいってしまえば、あとは降りるだけ。抵抗はほとんどありません。足じゃなくて、手だってキックペダルを踏み込めます。
ところが、キックペダルをちょいちょいと探って、上死点をさがすのが、とってもむずかしい。むずかしいから、さがすのをあきらめて、一番キックが重たくなったところ(上死点のちょっと手前)から、キックを開始することにします。ここなら、わかりやすい。
でも、なんせ一番重たいところだから、思いきり踏んづけても、跳ね返されるのがオチ。
だから、一番重たいところでは、力を入れません。そーっと踏んづける。いや、踏んづけもしません。足の重みをそーっとキックペダルに預けるだけで、思いきり蹴飛ばしても降りなかったキックが、ゆっくりするするっと降りていきます。と、その瞬間を狙って、ぶるるんと踏み下ろします。
これ、微妙なタイミングがキモです。行き過ぎてしまうと、ぶるるんと踏み下ろしても、おいしいところを通り過ぎてしまう。といって、早まってぶるるんしてしまうと、まだ重たいところに引っかかってしまって、跳ね返されます。
うまくタイミングがあえば、驚くほど軽くキックが降ろせます。で、ついでにエンジンがかかっちゃう。
フットレストに手をはさんじゃいそうだからやらないほうがいいけど、タイミングさえバッチリなら、足じゃなくて、手でかけることだって、可能です。
トライアル以前に、エンジン始動で疲れていたみなさん、これ必須です。
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これぞターン、
なんとなくでは、曲がらない。

ターンの基本は、マシンを傾けること。正しくは、タイヤを傾けることです。前輪が宙に浮いていても、後輪がちゃんと傾けば、マシンは旋回し始めます。マシンが傾けば、ハンドルも自然に切れます。右に曲がりたくてハンドルを右に切ると、マシンは左に倒れたがります。結果、意志と裏腹、ぐらぐらしてしまいます。リーンアウトなんて、その先の話。あなたの後輪、ちゃんと傾けられていますか?
ターンのきっかけは、タイヤを傾けることです。基本、ハンドルを切ることじゃない。でも、極低速ターンではみんなハンドルを切ってます。実は問題は、ターン中ではなく、ターンのきっかけにハンドル操作をするかどうなんです。
もう一度、スタンディングスティルを思い出してください。マシンが右に倒れたら、ハンドルを右に切る。そしたら、マシンは左に倒れる。ハンドルを右に切ると、マシンは左に倒れる。右に曲がろうとしてハンドルを右に切ると、マシンは左に倒れていくんです。
左に倒れたマシンは左に旋回します。あれ? 右に曲がりたいのに、左に曲がっちゃった。意思に反して行きたい方にぜんぜん向かってくれないバイクに苦労したこと、ありませんか? それは、こういう作用が働いているからです。不思議でもなんでもない。やり方を、少しまちがえていただけなのです。
さぁ、ハンドルを切ることではターンが始まらないということはわかりました。では、ターンのきっかけは、どうやってつかみましょう。そしてハンドルは、どうやって切るのでしょう……。
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ステップワークは、
トライアルの肝。
トライアルの操作系で、なにが一番大事か。全部大事だけど、えいやと語ってしまえば、それはフットレスト。これを忘れては、マシンがどっちへ走っていこうが、文句はいえません。ターンもステアケースも、トライアルはステップワークがイノチです。
こんなモデルを考えてみましょう。シーソーです。絵でハンドルを持っていますが、持ってなくてもよろしい。シーソーは、実はフットレスト。もちろんシーソーは、もっと低くても大丈夫です。
さて右に倒れる時は、右足を踏み込みます。思いきり踏み込むと、シーソーは一気に倒れるので、右足を踏み込みながら、左足でバランスを調整しています。右足は荷重をかけたまま、左足の荷重を抜くと表現したほうがピンとくるかもしれません。
ここでもやっぱり主役は足の裏です。これまでの人生、こんなに足の裏のことを考えたことがないというくらい、足の裏のことを思ってあげてください。愛しいあの人に対する気持ちといっしょで、一生懸命思えば、足の裏もきっと期待に応えてくれます。
シーソーが右に倒れる時、腰から上は直立を維持しています。これ、実はリーンアウトの基本型です。股の間で、マシンが(シーソーが)左右にぎっこんばったん。それでも腰から上は、しゃきっと直立を維持しています。
マシンが(シーソーが)右に傾いた時、上半身がいっしょに右に傾くのがリーンウィズ。マシンよりももっと右に傾くのがリーンイン。マシンの傾きより上半身の方向きが少ないのがリーンアウトです。マシンが(シーソーが)右に傾いた時、上半身が直立していれば、それはリーンアウトのフォームがとれているということです。
フットレストによる方向づけは、ターンだけじゃなく、直進する時にも、大いに有効です。たとえばウイリーをした時。前輪が浮いている時には、前輪による操縦はできません。左右のフットレストを均等に踏んづけることで、前輪が浮いても、マシンは直立を続け、直進します。丸太状の一本橋のような、進行方向を修正するのにハンドルを切ってしまうと、橋から落ちてしまうような場合でも、フットレストでの修正なら挙動変化が少なく安心です。
フットレストは、トライアルマシンのステアリングです。いえ実は、トライアルマシンだけじゃなくて、どんなオートバイだっておんなじなんですけどね。
ターンしようとする。外側の足の力を、そっと抜く。オートバイ、するするっと内側に倒れる。次の瞬間、ハンドルが内側に切れ込んでくる。それをハンドルに添えた手で、そっと押さえる。
ターンのいろはを分析すると、こんな感じ。
フットレストだけの操作では、なかなかいきたい方向にぴたりと操縦できませんが、それだけ、フットレストでの操作は微妙だということです。そこで初めて、ハンドルで方向性を補助する意味が出てきます。
フットレストの操作をもっと研究したければ、思い切ってハンドルから手を離してしまうという荒技があります。さすがにそれでは乗っていられないのだったら、ハンドルのセンターを持ってみる。せめて、片手だけで乗ってみる。
とにかく、できるだけ、ハンドルに依存しないで走る訓練をしてみる。そうすることで、あなたの足の裏は、どんどんトライアル・ソウルになってきます(靴底=ソウル=魂というだじゃれ。おそまつ)。
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より深いリーンアウトが必要な場合。
ステップワークの基本は、走ってなくてもトレーニングできます。極低速で曲がるトライアルでは、スピードにまかせての旋回とはちとちがう。極低速の極致といえば、止まっている状態。足の裏の感覚を研ぎ澄ませれば、いろんなことが見えてきます。
ターンをしているトライアルライダーのみんなって、リーンアウトのフォームが特徴的ですね。でも、なんでもこんでもこんなフォームをとってしまうと、実はフットレストに与える力だけでは、マシンを起こすことはほとんど困難。なので、アクセルを開けたりして、マシンを立てたりします。逆にいえば、アクセルを開けたくない時に、こんなに大きなボディアクションをとってしまったら、バランスをとるどころではなくなって、にっちもさっちもいかなくなってしまうわけです。
それでも、トライアルは時と場合によりけり、いろんな地形があって、いろんなテクニックがあります。こういうフォームをとる場合も、もちろんたくさんあるわけです。
ターンをしながら、しっかり加速をしたい場合、キャンバーターンなど、地面がもともと傾いていて、ふつうに傾けたのでは、必要なだけ傾けきらない時などがそれにあたります。
こういった、深いリーンアウトも、ほとんどマシンとからだが同一線上にあるかのような、微妙なリーンアウトも、どっちもリーンアウトのうち。浅いターンも深いターンも、要所要所で連続的に使い分けられるようになったなら、もう一人前です。
付け加えれば、ターン中にフロントアップをしなければいけない時などは、深いターンのフォームからではむずかしい。アクションを起こすなら、なるべく基本のフォームに近い形がいいわけで、フロントアップをしたい時は、なるべく浅いターンフォームをとるべしということになります。
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セクショントライしてみましょう!
セクショントライしてみましょう。トライアルルールも、ちょっとずつ覚えてってください。セクションを走るのって、ただ練習するのとは大ちがい。テープで囲うだけで、すげー緊張しちゃうもの。でもそれが、トライアルの醍醐味。ぜひ、あなたも……。
セクションは、テープやセクションマーカーで囲まれています。入り口から入って、出口から出る。前の人がちゃんとセクションアウトしてから、オブザーバーに合図してトライを始めてます。トライしている人をじゃましたり、順番を乱して割り込んじゃいけません。あったりまえのことだけど、足をつくかどうかより、こっちのほうがよっぽど大事。
それにしてもセクションってのは、なんでもないところでも、むずかしい。まして、少しむずかしいところはうんとむずかしくなります。精神的な問題なのか、この点は、経験を積むのが一番の解決策のようで。
トライアル大会に出るとなると、トライアルテクニックもそうですが、ルールの習得も必要になるし、ノウハウがいろいろ必要になってきます。そんな技術のひとつひとつを習得し、きのうより今日、今日より明日、自分が少しずつ成長していくことが実感できるようになったら、あなたはもうすっかりトライアルの虜、になっているはず。
いつまでもずっと、いっしょにトライアル、楽しみましょう。

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