2位に小川友幸 今シーズン連勝はストップ
2014全日本トライアル選手権シリーズ第5戦中国大会 5年ぶりに全日本選手権開催地となったのは岡山県高梁市川上町原瀧山トライアルパーク。奥深い林と開けた岩場が戦いの舞台だが、どちらも滑ることで定評がある。加えて今回は、土曜日の夕方から夜半にかけ、断続的に激しい雨に見舞われて、コンディションは一気に悪化した。 主催者はすべてのセクションの設定を見直し、さらに谷底に配置されていた第7セクションをキャンセルとして円滑な大会運営を計ったが、セクションにまでたどりつけないおそれがあったり、降りたが最後上がってこれないのではないかなど、いつもとはちがった不安を胸にスタートしていくライダーも多かった。 おおむね天気予報通りだった土曜日に対し、日曜日は天気予報が外れて朝からいい天気に恵まれた。おかげで湿ったコンディションは徐々に乾いてきて、終盤にはずいぶんとグリップを取り戻すようになっていた。時間が経てば経つほど走りやすくなるコンディションが、時間配分のむずかしさをも呼んだ。 ■国際A級スーパークラス 12セクション(うち1セクションはキャンセル)2ラップと、2セクションのSSによる戦い。SSは10セクションと12セクションを、2ラップ終了後に手直しして作られた。 今シーズン3勝をあげている小川友幸(ホンダ)は、ここで勝利すればいよいよ2年連続タイトルが目前となる。これをランキングポイント10点差で追うのが野崎史高(ヤマハ)で、昨シーズン小川友幸と一歩も引かぬ争いを演じた黒山健一(ヤマハ)は、今シーズンまだ1勝もできずに小川友幸とは15点差のランキング3位につけている。 このあたりでなんとしても勝利したい黒山は、しかし第1セクションでまさかの5点。けっして簡単なポイントではないものの、セクションに入って5メートル、国際A級とも共通のポイントだったから、この5点には驚かされた。 第2セクションから第9セクションまでは、谷状の森の中のセクション。つるつるに滑るコンディションで、クリーンができるできないではなく、セクションに入るまでに苦労する、コース移動がままならないというライダーも続出。なかなか見られない全日本となった。 IASのトップライダーもその苦労は変わらない。タイヤが土をまったくつかまない。そんなコンディションなのに、IASのセクションには高い岩が用意されているからほとんどすべての野ライダーが5点となっていく。 そんな中で、野崎史高が元気がいい。第2、第3と続けて3点で抜け出し、さらに第5セクションでは黒山とふたりだけ1点で抜け出した。野崎は5年前のここでの全日本で自身3勝目の勝利を挙げているから、原瀧山は相性がいい会場ともいえる。 出られるところは確実に抜け出して、野崎が試合をリードしていく。そのリードは第9セクションで6点までに広がった。野崎を追うのは小川友幸、黒山健一は第9セクションで5点となり、野崎には8点差をつけられていた。小川毅士(ベータ)は黒山からさらに5点差をつけられている。 セクションは11セクションから空の開けた岩場に出て、それで1ラップを終える。日があたっているから乾きは早いが、難度は高い。この11セクションで、野崎が大岩の攻略に失敗。しかしそれでも、1ラップ目の野崎は小川友幸に1点差ながらトップを守った。野崎24点、小川友幸25点、黒山27点と、トップ3は僅差だ。小川毅士が32点、野本佳章が33点、柴田暁が34点でトップ3を追う。 2ラップ目。コンディションはよくなっている。土が乾いてきて、グリップは少し向上している。減点数も大きく減るかもしれない。この2ラップ目が、勝負を決めた。 野崎が林の中で5点を連発して、崩れていく。対して黒山は、小川友幸が「神がかかったライディング」というように、第6セクションまでを2点で押さえた。ここだけで小川友幸に7点、野崎史高には18点もの差を作った。これで一気に黒山がトップに出る。 SSは難度は高かったが、トップ2には足が出るセクションではなかった。そのまま、黒山健一が今シーズン初勝利。昨年の中部大会以来だから、ほとんど1年ぶりの勝利となった。 3位は、2ラップ目に崩れた野崎史高を逆転して、小川毅士が入った。第3戦九州大会に続いて、今シーズン2度目の表彰台だ。 小川友幸は連勝を逃したが、ランキング2位の黒山と野崎が勝ち星を分け合っているから、シリーズを戦ううえでは、今回の結果も悪くはない。残り2戦。小川友幸のリードは、12点に広がった。 【黒山健一のコメント】 ほとんど1年ぶりに表彰台の中央に立てました。これまでずっと勝てなくて、つらい思いをしましたし、いろいろなトライをしました。そのトライが、すべて裏目に出た結果、ここまで勝ちがなかったシーズンとなっていました。タイトル争いは正直いって非常に厳しいですが、残り2戦を勝てば、全7戦をぼくと小川さんが3勝ずつで分けあうことになるので、それでシーズンを締めくくりたいと思っています。あと2戦、がんばります。 【小川友幸のコメント】 勝てませんでした。そんなに悪い状況ではなかったんですが、勝ちパターンにもっていけませんでしたね。チャンスはありましたが、勝負どころでいい走りができなかったという結果ではないかと思います。ただ勝負どころをことごとく逃して4点差なので、悪い試合ではなかったと思います。チャンピオン争いはまだまだ決まらないので、最後までしっかり戦いたいと思います。 【小川毅士のコメント】 自分の走りとしてはよくも悪くもなく、3位争いをしている実感もなかったのですが、ひとつひとつセクションをきちんと出ていたのが結果につながったと思います。最後は表彰台がかかったトライで緊張もしたんですが、今日は体力的にきつくて、腕がつっちゃっていたので、それがたいへんでした。もう少し手応えのあるセクションがあれば、順位も上げられるのかなと思います。
藤原慎也(オッサ)が好調を続けている今シーズンの国際A級も、この日はサバイバルな戦いとなった。さすが国際A級ライダーたち、オール5点はいなかったものの、1ラップ11セクションのうち、抜けられたのがたったひとつ、というライダーは何人かいたようだった。 今回は、クリーンできるところをいかにクリーンできるか、そしてそれにも増して、抜けられるところをいかにしっかり抜けられるかが勝負となった。クリーンができる(可能性がある)のは、第1セクションと後半の10セクションから12セクション。それ以外は抜けるのがたいへん、というセクション設定だ。 そんな中、2002年に国際A級に昇格して、今年が13年目となる砂田真彦(ホンダ)が、2ラップ目に素晴らしい走りを見せる。クリーンこそふたつと少なかったものの、5点が一つもなく11セクションを走りきった。国際B級時代から数えると、全日本選手権参戦15年目の初優勝だった。 2位はランキングトップを快走する藤原。革新マシンオッサが、ぐいぐい登ってくれて好結果が出たという。藤原は、次の中部大会でタイトルを決められるところまで駒を進めてきた。 3位は小野貴史。1ラップ目の11位から、2ラップ目の19点は全ライダー中のベストスコアだった。1ラップ目の減点がもう少しまとまっていれば、勝利のチャンスはあった。 4位の吉良祐哉(JTG)は、1ラップにはトップだったものの、3位の小野と同点での4位となった。さらに同点で岡村将敏(ガスガス)が5位。6位の本多元治が、クリーン7でこの日のベストクリーン勝を獲得した。 【砂田真彦のコメント】 今日も、いい感じで走ることができました。北海道は毎年成績がよいですし、相性がいいんだと思います。ダイナミックな設定も好きです。この前勝ったときもそうでしたけど、集中のしかたを見つけたので、それで結果がよいのだと思います。ランキングでも2位以下を少し話すことができたので、この勢いでタイトルに向かって進みたいと思います。
こちらも若手、沖勇也 2位に入る
3位は山崎頌太 期待の若手である
久岡孝二は4位 初めて表彰台を逃した
国際B級は、セクション設定をやり直して、ほとんど岩をのぞいた設定に作り替えられたが、それでもたいへんな難セクションぞろいとなった。国際B級のスタートは午前7時半から。まだ日が昇ってまもないので、路面も乾いておらず、そこがライダーを苦しめるところになった。 今シーズンは、ここまで久岡孝二(ガスガス)と氏川湧雅(ガスガス)がふたりで勝利を分けあっている。勝利どころか、1位と2位はこの二人以外が独占している。その戦況が、このコンディションでどうなるか。 いつもなら、お互いの減点を確かめあうように走る二人だが、この日はすべてが混とんとしていた。第1セクションから、氏川が2点、久岡が3点と減点をし、いつものオールクリーンを目指す勝負とは次元がちがうことが予感された。 はたして1ラップ目、トップが30点前後をとる大量減点勝負。トップは氏川の29点で、久岡が2位で34点。やはりこの二人は強かった。いつもとちがうのは、3位の沖勇也(ベータ)が久岡に3点差で3位につけていることだ。 2ラップ目、ベストスコアで1ラップ目14位から追い上げてきたのが、まだ13歳の山崎頌太(ベータ)。2ラップ目の減点は32点だった。 優勝は氏川。2ラップ目は34点と減点を増やしてしまったが、2位には8点差をつけて、今シーズン2勝目をあげた。持ち時間ぎりぎりで、最終セクションはエスケープを余儀なくされた結果の勝利だった。 2位に、久岡の名前はなく、沖勇也が入った。沖の2ラップ目も氏川と同点の34点で、1ラップ目の氏川との点差が、そのまま最終スコアの点差となった。今シーズン、氏川と久岡以外の、初めて2位入賞となった。 3位は山崎頌太。1ラップ目にクリーンが一つもなく、減点が40点以上になったので追い上げもここまでだったが、2ラップ目のベストスコアは見事だった。まだまだこれからが楽しみな若手である。 そして久岡は4位。2ラップ目に38点とやや減点を増やして、さらに2分のタイムオーバーがあったのが災いした。久岡が表彰台を逃すのは、もちろん今シーズン初めて。 5位は山森篤志(スコルパ)、6位に生田目俊之(ホンダ)と大人のライダーが入った。生田目はランキング3位をキープしている。 この結果、氏川と久岡のチャンピオン争いは、氏川がランキングポイント1点差でトップに出た。ここまでは3勝1敗で久岡が優位に進めてきたタイトル争いだが、残り2戦の戦いがいよいよおもしろくなってきた。さらに氏川、久岡に続く若手ライダーの成長も楽しみだ。 【氏川湧雅のコメント】 今日は、いい走りができました。今までで一番よかったかもしれません。この調子で、残る今シーズンも戦えればいいと思っています。前回はけがの影響で本調子でないところがありましたが、今はまったく問題ありません。残るシーズンも、勝利を目指して走ります。