悪くない試合運びだったのだが わずかなミスを悔やむ黒山健一
2018全日本トライアル選手権シリーズ第2戦近畿大会 2018年全日本選手権もはや2戦目。近畿大会の会場は、昨年初めて全日本が開催された和歌山県有田郡湯浅トライアルパーク。土曜日、日曜日の午後といいお天気だったが、土曜日夜から日曜日未明にかけて現地は春の嵐に見舞われ、テントは吹っ飛び、コースは厳しく変貌し、駐車場も一面の田んぼ状態となって、泥と戦うトライアル日和となった。 ■国際A級スーパークラス 開幕戦は17名でにぎわったが、今回は成田亮がひじの故障で欠場。16名による戦いとなった。嵐は去ったが、若干の雨が残る湯浅トライアルパークは、朝一番よりIASのスタートの頃が一番気温が下がっていたような感じ。 黒山健一(ヤマハ)、野崎史高(ヤマハ)、小川毅士(ベータ)が第1セクションをクリーンして試合は始まった。6連覇を目指す小川友幸(ホンダ)は5点スタート。小川友幸は第2セクションでも5点となり、いきなり苦しい戦いを強いられることになった。 黒山は第3セクションまでを連続クリーンするも、第4セクションでエンスト5点。第2と第3で1点ずつ減点した野崎が2点でトップに出た。 第7までの沢セクションを終えたところで、トップは野崎の4点。これに続くは黒山の12点で、野崎は序盤にして大きなリードを築いた。小川(友)は25点で、さらに大差。柴田暁(ヴェルティゴ)、小川(毅)はさらに減点を重ねていて、好調なのは野崎一人という戦況だ。 第8セクションからは斜面と岩場でのトライとなる。ここで野崎がこの日初めて5点となった。手痛い失点だったが、これでも黒山には2点リードを保っている。後半セクションは難セクションで、小川(友)も第8では3点、第10では5点、第11では3点、黒山も第11では5点となったのだが、野崎は第9こそクリーンしたものの、第10、第11と5点となり、後半4セクションで一気に15点も減点、しかも最終セクションで足を痛めてしまった野崎は、それでも黒山と同点トップで1ラップ目を折り返すことになった。 2ラップ目、野崎は1ラップ目同様の乗れっぷりでセクションをこなしていく。黒山は、1ラップ目にエンスト5点に悔しがったが、2ラップ目にはハンドルから手が抜けるという失敗で悔しがった。そうして一進一退を繰り返しながら、黒山と野崎のトップ争いが続いていく。 その間に、着実にトップ争いに詰め寄ってきたのが、小川(友)だった。小川は2ラップ目に入ってミスがない。走るセクションを次から次へとクリーンしていく。1ラップ目序盤はミスが続いて絶望的な滑り出しだったが、その状態からよく持ち直したものだった。 野崎の鬼門は、1ラップ目と同じく第8セクションだった。ここでまたも5点。その後、第10、第11と5点となってしまったのも、1ラップ目と同様だった。1ラップ目は黒山も小川(友)もミスが多かったから、それでもトップを守った野崎だが、2ラップ目は守りきれなかった。 野崎に代わって黒山がトップに出るのと、小川(友)が追いついてくるのとは動じ、第9セクションで、二人は同点トップになった。その後、第11セクションで小川(友)が1点(2ラップ目、唯一の減点だった)、黒山が2点減点となり、2ラップの戦いの最後の最後で、小川がトップに躍り出た。 小川(友)と黒山の点差はわずか1点。SSはわずかなミスも許されない戦いとなった。ここでは10位でSSに進出した藤原慎也(ガスガス)が砂田真彦(ホンダ)を逆転して9位となり、齊藤晶夫(ホンダ)が野本佳章(ベータ)を逆転して6位となっている。されどトップ3はさすがに守るべきところはしっかり守る。SSの2セクションを、トップ3はいずれもきれいにクリーンして、順位はそのまま、小川(友)がわずか1点差で黒山を制して、開幕戦の雪辱を晴らした。 【小川友幸のコメント】 序盤は、もう今日は終わったと思いました。気持ちの空回りというか、原因は定かではありませんが、野崎選手もすごく調子がよかったので、もうこのまま追いつけないだろうなと焦りました。2ラップ目、ようやく体に力がはいり始めて、本来の力が出せたかなというところですが、まだまだ本調子とはいえません。去年は2位2位スタートだったので、去年よりはいいのですが、練習でも本来の走りができていないので、まだまだです。 【黒山健一のコメント】 前半、雨が降って、コンディションが悪く、走りにくいかなと思ったですが、みなさん、点数をまとめてきていたんですが、ぼくとしては調子が悪い中、1ラップ目にあの点数でまとめてこれたということで、2ラップ目に追い上げができるかなと思っていたのですが、2ラップ目の第7で、久しぶりに左手がすっぽ抜けるというイージーミスをしてしまい、それがくやしいところです。 【野崎史高のコメント】 2ラップ目の最後の方までトップだったんですが、第8セクションのヒルクライムを2回とも5点だったので、そこで一気に離されてしまったのと、それで気持ち的にも折れてしまったのが敗因です。でもトップ争いができていたので、開幕戦よりはよい戦いができました。それにしても、2ラップ目の小川さんはすごかった。
悪コンディション、難セクション。10セクション2ラップの戦いで、まず1ラップ目にトップに立ったのは、開幕戦同様にルーキーの武田呼人(ヴェルティゴ)だった。これに2点差でつめよっているのが、小野貴史(ホンダ)だった。 2ラップ目後半、多くのライダーが疲労から手足が攣って苦しんでいる。経験の少ない武田はその影響がもろに出て、失速。ベテラン勢が上位に進出してきた。 優勝したのは、昨シーズンまでIASを走っていた加賀国光(TRRS)。加賀と同点、クリーン数差で2位に甘んじたのが、ゼッケン1番の永久保恭平(ベータ)。さらに1点差で小野が続くという、僅差でのトップ争いだった。 【加賀国光のコメント】 スタートが早かったので、周囲の状況がまったくわからず、調子はよくも悪くもなかったのですが、もっといい人はいるんだろうなぁと思いながら走っていました。でも楽しく走れたので、よかったです。IAも強敵がいっぱいいるし、試合勘もなかったので、簡単に勝てるとは思っていませんでしたが、なんとか勝ててよかったです。
1位西村(左)、2位小玉(中央) 3位山中(右)
10セクション2ラップの他クラスに対し、6セクション3ラップで競われたレディースクラス。厳しいコースは、レディースの面々にはなかなか手ごわかった。 優勝はもちろんいつもの西村亜弥(ベータ)。西村は1ラップ目が5点、2ラップ目が1点、3ラップ目が1点、トータルで減点7点。2位にトリプルスコア以上の差をつけての圧勝だった。 しかし西村は、1ラップ目第5セクションでの減点5がくやしいという。勝利は西村の目標ではない。完璧なトライアルをすること。西村を追う後輩たちには手ごわい先輩だが、全力を尽くして完璧なトライアルをすることこそ、日本の女子トライアルのレベルアップにつながると信じる西村だ。 2位、3位は開幕戦と変わらず、小玉絵里加(ホンダ)と山中玲美(ホンダ)。3位には昨年中部大会で全日本にデビューした宮本美奈(モンテッサ)が入り、寺田智恵子(スコルパ)が5位となった。 【西村亜弥のコメント】 コンディションは厳しかったし気温も寒くてむずかしい大会となりましたが、1ラップ目の第5セクションで5点をとってしまって、それが残念です。2ラップ目も3ラップ目も1点ずつ。まだまだ、自分の納得いくトライアルができません。次こそ、納得のいくトライアルができるようにがんばります。
IB表彰式。優勝の和田(左) 2位塚本(中央)、3位中村(右)
近畿大会といえば、このライダー、このコンビ。1982年国際B級チャンピオンの和田弘行(ガスガス)が、久々に勝利を飾った。2位には、昨年のこの大会で優勝している塚本厚志(モンテッサ)が入った。 3位には、開幕戦真壁大会で優勝した中村道貴(ガスガス)。和田と塚本はすぽっと参戦で全戦参加はしていないから、ランキング争いとしては、中村が手堅くポイントリーダーとして点差を拡大している。開幕戦で2位となった沖縄の冨名腰慶亮(ホンダ)は8位だった。 厳しいコンディション、長いコースということもあってか、今回はベテランライダーの活躍が目立った大会となった。 【和田弘行のコメント】 コースが渋滞したりするのではないかと、第1セクションから下見なしでトライしていったら、沢の中が真っ暗でなんにも見えなくて、あせりました。2ラップ目はあっちこっちで手が攣って、セクションの中で攣った手を振ってなんとかならんかと思ったり。でもまぁ、勝ててよかったわ。次もどこかに出るよ。次は、地元の大会でないところで優勝したいな。