成田匠(ヤマハ)と小森文彦(ホンダ)とのタイトル争いは、たった2点差で最終戦を迎えた。これで両者は最終戦で勝ったほうが無条件でタイトルを獲得するという戦況を迎えた。いつにもまして、勝利に対して緊張感の漂うふたりだった。 125には厳しいだろうと思われる大ヒルクライムなどもあったが、そんなセクションを巧みに攻略していくのも成田のいつものスタイル。一方、このところ出だしに減点の多い小森も、今日は減点を最小限に抑えて、ステディな戦いを演じている。 1ラップ目の途中経過が放送で流された。成田が4点に対し、小森が5点、3位は白神孝之(シェルコ)の7点。この点差では、5点ひとつで簡単に試合はひっくり返るから、気は抜けない。 2ラップ目、オールクリーンは無理にしても、ラップを2点で終えるライダーがちらほら現れた。1ラップ目に7位だった本多元治(ホンダ)と白神だ。しかしそれでも、優勝争いには届かなかった。小森は2ラップ目を3点で終えた。一方成田は1ラップ目と同様、2ラップ目を4点で終えている。 結果、トップのふたりは減点8点で同点となった。成田は2点減点が4つ、たいして小森は1点が3つ、2点と3点がひとつずつ。この結果、クリーン数わずかにひとつの差で、成田の勝利が決まった。今回の勝利は、同時にシリーズタイトルを決定づけもした。クリーン数で決まったチャンピオン。し烈な戦いのシーズンだった。破れた小森も、くやしさをにじませながらも、実力を出しきって悔いのない晴れ晴れとした結末を味わっていた。 【成田匠のコメント】 「レベルの均衡したA級のみんなとの戦いは、ほんとにいい戦いができました。今日は1ラップ目からトップだったというけど、たった1点差で、なにがあるかわからない。ほんとに最後まで気を抜かずに走りました。小森くんとは同じペースで回っていたから顔を合わせたけど、お互いに正確な点数を把握していなくて、デモどっちが勝つにしてもがんばろうと声をかけあって走りました。いいトライアルができたと思います」
平田貴裕(スコルパ)と滝口輝(ホンダ)の6点差のチャンピオン争い。これにケガで途中欠場が続いた藤巻耕太(ガスガス)がからむ国際B級の争い。 平田は3位以内に入れば無条件でチャンピオンとなる。しかし、その平田の調子が上がらない。練習中にエンジンをこわし、クランクケースを組み換えての参戦となったという。いつものエンジンと微妙にちがう感触もあったのかもしれない。1ラップ目の平田は、6位にとどまった。 トップをキープしたのはやはり藤巻だった。1ラップ目は8点。1ラップを一桁で回ってきたのは、藤巻だけだった。しかもその減点も5セクションまでで、6セクション以降はすべてをクリーンしてきたのだから、やはりこの125乗りはほんものだ。滝口は13点と滝口に5点差ながら、13セクション全体に渡って減点を喫していた。 2ラップ目、思わぬ伏兵が登場した。小野田理智(ベータ)。マシンは旧型のテクノだが、もともとA級ライダーの実力者。長いお休みでB級に降格しての戦いとなった。小野田の2ラップ目はこれも一桁減点の7点。これで1ラップ目の7位から、一気に3位にジャンプアップした。 平田も2ラップ目は追い上げたが、なんとか4位争いの頭にでるところまで。小野田に表彰台を奪われたかたちで4位で最終戦を終えた。これで滝口が優勝していたら1点差でチャンピオンの座を譲らなければいけないところで、実際、競技中にはチャンピオンのことはあきらめたという。 しかし滝口は滝口で、藤巻に優勝を阻まれていた。滝口の追い上げは急だったが、これに藤巻がからむという今シーズンを象徴するような争いで、結局わずか2点差で平田のタイトルが決定した。平田は兄の雅裕が2006年のB級チャンピオンとなっていて、兄弟で2年連続タイトルを獲得した。 【藤巻耕太のコメント】 「今日は出だしがとても緊張していて、1ラップには体がうまくうごかなった。バタバタ足が出てしまいました。でも1ラップ目の後半から気持ちを入れ替えて、クリーンをねらって、クリーンが出るようになりました。体も動いてきたので、よい走りができるようになりました。今年はケガもしたけれど、いいシーズンだったと思います。来年はA級でがんばります。今のままではA級のセクションを走るのは厳しいと思いますから、これからたくさん練習してがんばります」 【平田貴裕のコメント】 「1ラップ目は調子が悪くて、途中からなんとかまとめられるように追い上げました。1ラップ目は、チャンピオンはあきらめかけました。それで、チャンピオンのことは気にせず走るようにしました。シーズン前半に調子よかったんで、その貯金で後半調子悪くても、チャンピオンになれたんだと思います。後半はほんとにイマイチで、北海道で優勝して以来調子が出なくて残念でした。今回も、今週になってエンジンこわしちゃって、今日の出場に間に合うかどうかぎりぎりだったんです。チャンピオンとれて、ほんとにうれしかったです」